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全国初「空き家税」京都市が2026年以降導入 2023年4月号

2023.10.05

家が数多く残る京都市で「空き家税」が全国で初の試みで導入される
ことになりました。背後には京都ゆえの事情があるようです。空き家を
念頭に置いた課税強化は、国も取り組もうとしています。

 

◆課税を嫌って売却や賃貸へ動いて欲しい
京都市の「空き家税」は昨年3月にできた条例で定められ、今月24日に

松本剛明総務相が創設に同意しました。

2026年以降、税金を課すことになります。
正式名称は「非居住住宅利活用促進税」。この制度を設ければ、空き家

所有者が課税を避けるために売却や賃貸へ動き、住宅供給を促すことに

つながると想定しています。市税制課の担当者は「子育て世代は京都市

で家を買えず、周辺自治体に住む。若い世代の流出に歯止めをかけたい」
と語っていました。京都市の人口は21年の1年間だけで約1%にあたる1万

1900人減り、減少幅が2年続けて全国の自治体で最大でした。

22年の転出者が転入者を上回る転出超過は2228人で、年代別では25〜

29歳が最大の1633人の流出となっています。市内の不動産業者は、

京都独特の住宅事情をこう解説しています。
「景観条例で高さ制限があり、三方が山で囲まれているので住宅地を

広げられない」そんな中で始まるのが、住宅供給の促進を目的にした

「空き家税」です。課税対象は空き家に加え別荘も。
税額は家屋の価値や立地に応じて決まります。老朽物件など固定資産

評価額が100万円未満(最初の5年間)の家屋は課税しません。
市の試算によれば、やや郊外にある築30年、床面積150平方メートル

の戸建て住宅は年4万円。嵯峨嵐山の築50年、同300平方メートルの

別荘は約23万円になります。
市内にある空き家は約10万6000戸、別荘・セカンドハウスは約2200戸

(18年)に上ります。

うち課税対象見込みは1万5000戸。税収額は9億5000万円。
市の担当者は「税収は重視していない。空き家を少なくし、町の発展

につなげることを目指す」と強調しています。不動産業者は、京都の

空き家が市場に出ても買い手が付くか、懐疑的にみているようです。
「子育て世代は市内でローンを組んで中古物件を買うより、市外で

庭付き新築をと考える」持ち主の事情はこう考えています。
「空き家のまま抱えているのは処分できない理由がある、または税

負担できる余裕があるからだろう」

 

◆老朽化した空き家への対策は国レベルでも進む
ほかの古都はどう考えているのでしょうか?奈良市の担当者は「関心

はあるが、課税は難しく、検討していない」、「それよりも『国の法

改正』への対応を検討しないといけない」。『国の法改正』とは、

今国会に提出された空き家対策特措法の改正案を指します。
15年施行の同法が念頭に置くのは、老朽化した空き家への対応です。

そのまま残せば倒壊するなど、近隣に迷惑を掛けかねないため、手を

打とうとしていました。具体的には、倒壊の危険がある「特定空き家」

を指定し、行政代執行で解体できるようにしました。住宅が立つ土地

は、固定資産税が減免される特例がありますが、「特定空き家」は減

免対象から外し、負担増となる持ち主に処分を促そうとしました。

今回の改正案では、特定空き家の前段階の「管理不全空き家」も減免

対象から除外し、処分増を図る考えです。
国土交通省によると、対象になりそうな家屋は約100万戸あるそうです。

 

◆他の地域への拡大は?

効果が出れば同様の問題を抱える他都市の参考になりそうではあります

が、京都市では毎年の収入9億円前後に対し徴収コストが2~3億円と試算

されており、かなり費用対効果の悪い税金になってしまっていることも

課題となっています。

「財政難でやるのではない。住宅の流通促進の為だ。」と強調する京都

市ですが、本当に住宅流通の決め手になるのかどうか「空き家の利活用

促進」が進むのか注目すべき課題が多いように思います。