投稿

成人年齢引き下げで不動産契約はどう変わる? 2022年1月号

2022.06.04

 

2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
これによって賃貸借契約などにどのような影響が生じるのかを
ご紹介します。

 

〇18歳でも親の同意なしで契約できる
2018年6月に行われた民法改正によって、成人年齢が20歳から18歳
に引き下げられることが決定されました。
この改正民法が2022年4月から施行されるため、4月1日時点で18歳
以上20歳未満の人も全員成人年齢に達することになります。
成人年齢が引き下げられたのは、すでに選挙権年齢が20歳以上から
18歳以上に引き下げられたことに加え、諸外国でも成人年齢を18歳
とする国が多いことが理由として挙げられています。
また、2020年度の現役高校卒業者の進学率は4年制大学・短大・専
門学校等を合わせ77.5%であり、およそ5人に1人が高校卒業と同時
に社会人になっていると見られることも、18歳をもって成人したと
みなすのが妥当ではないかという意見を後押ししました。
成人になるという事は、親の同意なしにできることが増えることを
意味します。ただ契約や結婚などの法律行為ができる一方、お酒・
たばこなどの嗜好品、競馬や競艇などのギャンブルについては、依
存症への懸念や健康面での問題が大きいこともあり、従来どおり20
歳にならなければ認められません。

 

〇同意なしで行える法律行為
一般の社会生活におけるいちばん身近な法律行為は契約です。
携帯電話の契約、クレジットカードの契約、賃貸借契約などです。
未成年の場合、さまざまな契約を自分だけで締結する事は認められ
ていません。必ず「法定代理人」が必要となります。
ちなみに法定代理人とは「親権者(一般的には父親、母親)」か
「家庭裁判所が選任した未成年後見人」のいずれかです。そして、
未成年が勝手に行った契約は法定代理人によって取り消すことができ、
取り消した契約は最初から無効になることが、民法の第5条、第12
0条、第121条で規定されています。これが4月からは18歳以上20
歳未満であっても自分だけで契約できるようになります。

 

 

〇成人年齢引き下げの影響は少ない
不動産業界においては、賃貸借契約を締結する場面で2022年4月1日か
らの成人年齢引き下げの影響が出てきます。
しかし、この点については不動産取引の実務面においては、それほど
大きな影響はありません。これまでは、『20歳未満の学生は親権者を
契約者とすることで親権者同意書を不要とするケース』又は『18歳
から20歳未満の本人が契約者となり親権者同意書を添付するケース』
が多くみられました。今後は、親権者同意書は不要となりますので、
わざわざ親権者を契約者とする必要がなくなります。
しかし、学生の場合は収入面で不安がありますので、親権者に連帯
保証人になってもらうことには変わりありません。
むしろ、引き下げに伴い契約者を本人とすることができるのでトラブ
ル時の対応が簡素化でき実務上はメリットがあるかもしれません。

 

〇誕生日に注意
2022年4月1日以降の契約に関して、卒業を控えた高校3年生には18歳
と17歳がおり、契約時に賃借人が成人の場合と未成年の場合が混在し
ます。早生まれの高校3年生(17歳)が高校卒業後の新居を借りるケ
ースであっても契約時には未成年ですので、親権者同意書が必要とな
ります。
オーナー様におかれましても、賃借人の年齢で特に高齢などは既に注
意しておられると思いますが、今後は18歳かどうかも注意が必要とな
ります。2022年4月1日以降の18歳は携帯電話の契約やクレジットカー
ドの契約、ローンの契約も可能となりますので、本人の理解力や成熟
度によっては安易に大きな負債を抱え、結果家賃の滞納へと繋がって
しまうかもしれません。契約には責任が伴うことを念頭に置き、不動
産業者やオーナー様からのより丁寧な説明が必要となってくるでしょう。