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自筆証書遺言の法務局保管制度について 2020年10月号 

2021.01.08

自筆証書遺言を法務局で預かる制度が新設され、令和2年7月から実施され

ています。 (法務局における遺言書の保管等に関する法律)
これは遺言をめぐる相続人間の紛争予防と相続登記の促進に寄与する制度と

して注目されています。

 

◎遺言書を預ける手続き
遺言書を法務局へ預ける場合には、自筆の遺言書を住所、本籍地、所有不動

産のいずれかを管轄する法務局※へ出頭持参し、所定の申請手続により行い

ます。 これには日本に住所があれば国籍は不問で、手数料は3,900円(収入

印紙)です。 なお、本人確認のため顔写真のある本人確認書類(運転免許証・

マイナンバーカード等)、 本籍地の記載がある住民票(3ヵ月以内)が必要

です。 申請書は法務省HPからダウンロード又は法務局(遺言書保管所)窓口

に備えつけれています。法務局では遺言自体のチェックや相談を受け付けませ

んので、その書き方に留意する必要があります。

なお民法の一部改正により財産目録に自書が不要となり、パソコンで作成した

目録や、登記事項証明書、銀行通帳の各コピーの添付が可能です。

 

◎遺言書の保管書の交付
遺言書が保管されると保管証が法務局から交付されます。遺言書の保管は

その画像を磁気ディスクに保存する形式で行われ、これに遺言書作成年月日、

遺言者の氏名、生年月日、住所、本籍と遺言を受ける受遺者、遺言執行者の

記載がある場合にはその者の氏名住所が記録されます。
遺言書の原本閲覧は本人のみ可能で、それを保管する法務局で行い、その他

の法務局ではモニター画面で行われます。本人から保存の撤回が可能ですが、

保管自体の撤回であり、その内容をも撤回するものではありません。

 

◎遺言者死亡後の手続き
遺言者死亡後、誰からでも保管の有無を確認することができます。保管がな

ければない旨の、保管があればある旨の証明書が交付されます。
保管がある場合には、その交付請求をすることが出来ます。その請求ができ

るのは相続人(受遺者・遺言執行者を含む)で、廃除で相続権がない者、

相続放棄をした者、等も含まれます。

 

◎遺言書保管の通知
相続人等の内、いずれかの者が前記の遺言書情報証明書の交付請求または

閲覧をした場合には、法務局からその他の相続人に対して保管事実の通知

を行います。交付または閲覧をしない限り通知されませんので、これを補完

するため、法務局が死亡の事実を知ったときに遺言者が指定した相続人の

1名に通知する「死亡時通知制度」を設けていますが、この運用は令和3年

度からとされています。

この制度は、家庭裁判所の検認が不要となる点で銀行預払戻しやその後の

相続登記等の遺言執行の迅速な処理に資するものとして評価されるものです

が、遺言書の正確性の担保としては公正証書遺言が優れています。

 

※ 自筆証書遺言書保管制度の遺言書保管所一覧(東京都・埼玉県)
  東京法務局:本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局
  さいたま地方法務局:本局、川越支局、熊谷支局、秩父支局、所沢支局、

  東松山支局、越谷支局、久喜支局