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都市郊外の庭付き戸建住宅の所有者間で、飼い犬の鳴き声について2017年7月号

2018.01.11

5月号からの続き~ペット社会となった現代で犬の鳴き声がトラブル事例を
紹介します。

 

飼い主は鳴き声が近隣の迷惑にならないようにする義務がある

 

都市近郊の山間部を通る国道からさらに200mほど山を登った地域に、山の斜面を
切り開いて造成した一団の住宅地があり、女性Xが平成6年にそのうち1軒の土地
付建物を購入し入居。
当地は私鉄の最寄駅から5㎞以上離れた立地です。
Xは自宅でコンピューター関連のプログラム作成等の仕事をしています。

 

Yら(母と息子)は平成8年、X宅と幅員4mの道路を隔てた斜め向かいの土地付
建物に入居。X宅とY宅は道路を挟んで直線距離で32・5mです。Yらは平成11年
頃、生後1、2カ月の子犬を入手し、庭に犬小屋を置き、庭で放し飼いの飼育を
始めました。

 

Y息子の勤務形態は極めて不規則で、自動車で早朝に出勤したり、帰宅が深夜に
及んだりします。
Y犬は、Y息子が自動車で出かける際は時間を問わずY息子の気配がなくなるまで、
帰宅の際はY息子を見つけると自動車から出てくるまで鳴き続けました。さらに
見知らぬ人が通っても鳴き続け、しかも他の犬と比較しても大きな鳴き声でした。

 

平成21年春頃から、近隣のZ宅の室内犬が逸走、X敷地内に入り込む事態が発生。
以降、Z犬は度々逸走し、同時期にY犬は真夜中も頻繁にほえる状態となり、Xは
就寝中に犬の鳴き声で起こされる頻度が増え、XがZやY宅に向けて大声で苦情を
言う事態が発生しました。

 

平成22年11月中旬、XはPCMレコーダーを購入し、X宅の2階から窓を開けた状態
で何回もY犬の鳴き声を録音。
音量は最大値70・6 dB 、平均値は64・5dB(深夜早朝を含む)でした。同年12月
中旬、Xは心療内科を受診し、「抑うつ状態」の診断で抗不安剤を処方されて通院。
Y息子も十二指腸潰瘍で、平成23年10月から翌年2月頃まで入院加療しました。
そのため、Y犬は他所の親戚宅に預けられ、この間、Xの通院はありませんでした。

 

翌年2月、XはY母に神経症の発症を告げて、犬の屋内飼育や専門家による犬の躾
などを要請。さらに同年10月、簡易裁判所に鳴き声差し止めおよび損害賠償請求
調停を申し立てました。Y母は本件周辺は犬の屋外飼育が多く、他犬も鳴いており、
受忍限度を超えていないと抗弁し、調停は三回で不成立。

 

平成24年秋、XはYらに対し損害賠償訴訟を提起し、鳴き声が受忍限度を超え、
不法行為に該当するとして治療費、録音機材、慰謝料(150万円)等合計182万円
余の賠償を請求。
地裁は「住宅地で犬を飼育する飼い主は鳴き声が近隣に迷惑を及ぼさないよう犬
を躾け、必要があれば調教依頼など飼育上の注意義務を負う」「XがYらに苦情を
言い、調停申立後も真摯に適切な措置を執らず」「Xの平穏に生活する利益を違法
に侵害し鳴き声は受忍限度を超えた」と歯科を除く医療費、録音機材、慰謝料
(25万円)等約38万円の支払いを命じました。

 

(大阪地裁 平成27年12月11日判決 判例時報2301号)。