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売買契約のチェックポイント

2013.02.12

不動産の売買契約は、高額な資産を対象とした取引ですので、一般的には、契約書を作成して取り交わします。
また、宅地建物取引業法でも、不動産会社(宅地建物取引業者)に対し、契約が成立したら遅滞なく契約内容を記載した書面を、宅地建物取引主任者に記名押印させた上で交付することを義務づけています。

ここでは、売買契約書で確認すべき主なポイントを説明します。
もちろん、確認すべき事項はこれだけではありませんので、疑問点があれば、不動産会社に「完全に納得できるまで」確認するようにしましょう。

 

ポイント①売買契約書の一般的な項目とポイント

 

以下に売買契約の一般的な項目とそのチェックポイントを紹介します。

 

ただし、個別の契約によって取り決めの内容と確認するポイントが変わりますので、留意して下さい。  

 

(1) 売買物件の表示

 

購入予定物件の表示に誤りがないかを確認します。
一般的には、登記記録(登記簿)に基づいて契約書に表示されます。売買対象となる物件が明確であることが、売買契約の大前提です。

 

(2) 売買代金、手付金等の額、支払日

 

売買代金や手付金等の金額と支払日をしっかりと確認します。期日までに支払えない場合は、契約違反となる場合もありますので注意しましょう。
また、手付金については、その取り扱いをしっかりと確認します。手付金がどのような手付(解約手付、証約手付、違約手付)であるのか、金額は適当か(売買代金の何割程度か)などを確認します。
手付けが解約手付であれば、いつまで手付解除が可能であるかについても確認しましょう。
なお、売主の信用力に不安がある場合は、高額な手付金等の支払いには十分に注意する必要があります。

 

(3) 土地の実測及び土地代金の精算

 

土地の面積は、登記記録(登記簿)に表示された面積と実際の面積が違うことがあります。
したがって、売主が引き渡しまでの間に土地の実測を行うことも多いようです。実測の結果、登記記録(登記簿)の面積と実測した面積が違う場合は、その面積の差に応じて、売買代金を精算します。(実測をするのみであえて精算しないこともあります。)
一般的に、売買代金の精算は、当初の売買代金と当初の売買面積(登記記録(登記簿)上の面積)に基づく1㎡当たりの単価を用いて行われます。

 

(4) 所有権の移転と引き渡し

 

所有権の移転と引き渡しの時期を確認します。引っ越しの予定などを踏まえて、問題ないか判断します。所有権移転と引き渡しは代金の支払いと引き換えに行われますが、不動産取引の実務では、代金支払いの場で、所有権移転登記に必要な書類や鍵などが買主に引き渡されることで完了することが多いようです。

 

(5) 付帯設備等の引き継ぎ

 

特に、中古住宅の場合は、室内の照明やエアコンなどの設備、敷地内の庭木や庭石などの引き継ぎについて明確にしておく必要があります。このような付帯設備等の引き
継ぎをめぐるトラブルは意外と多く発生しますので、契約前に、何を引き継いで、何が撤去されるのかを売主との間で十分に調整する必要があります。
また、引き継ぐ設備等が故障していないかなど、その状態も事前に確認しましょう。
契約に当たっては、付帯設備等の一覧表を用いて一つ一つ確認することが多いようです。
(このとき用いる一覧表は「物件告知書」「物件状況確認書」などといわれています。)

 

(6) 負担の消除

 

購入予定物件を完全な所有権で取得できるかを確認します。例えば、抵当権や賃借権など、所有権の完全な行使を阻害するような権利は、売主の責任によって除かれた状態で引き渡されます。このような権利が除かれないまま引き渡しを受けると、購入後に予定通り利用できない場合がありますので注意が必要です。
なお、投資用物件の売買では、テナントが入居していることが多く、その場合はテナントとの賃貸借契約に限って、買主に引き継がれます。この場合は引き継ぐ権利と引き継がない権利を明確にする必要があります。

 

(7) 公租公課等の精算

 

不動産売買契約では、固定資産税や都市計画税といった公租公課を売主と買主の間で精算することが一般的です。
その他、管理費などの費用を精算することもあります。精算は引き渡しの日を基準に、日割りで行われることが多いようです。
このような精算金も、売買代金とは別に必要となりますので確認しましょう。

 

(8) 手付解除

 

何らかの突発的な事情により契約を解除せざるを得ないときに、手付解除することがありますので、どのような取り決めとなっているか確認します。もちろん、当事者間の合意で、手付解除を認めない契約としたり、手付解除が可能な期間を限定することも可能です。
手付けの金額は、一般的に売買代金の20%までの範囲で設定することが多いようですが、手付金が少額である場合には、自分が解除するときの負担は小さくなる一方、相手に解除されるリスクも高くなります。逆に、手付金が多額である場合は、自分が解除するときの負担は大きくなりますが、相手方に解除されるリスクは低くなります。手付解除に関しては、手付金の額も併せて確認しましょう。

 

(9) 引き渡し前の物件の滅失・毀損(きそん)(危険負担)

 

売買契約締結後に、天災で建物が全壊するなど、売主にも買主にも責任のない理由によって、購入予定物件が滅失・毀損した場合の取り決めです。
不動産売買では、一般的には、売主が物件を修復した上で、物件を引き渡すこととなります。ただし、物件の修復に過大な費用がかかるとき、または、物件が滅失・毀損したことにより買主が契約の目的を達せられないとき(例えば、とても住む状態には修復されないなど)は、契約を無条件で解除することができます。
万が一の場合の取り決めですので、しっかりと確認しましょう。

 

(10) 契約違反による解除

 

契約違反(つまり約束違反、これを法的には「債務不履行」といいます)により契約を解除するときの取り決めです。
売主または買主のいずれかが債務不履行となった場合には、その相手方は契約を解除することができます。
このように契約違反によって解除となった場合には、契約に違反した者が違約金等を支払うことが一般的です。
違約金等はおおむね売買代金の20%までの範囲で設定されることが多いようです。契約に違反することを前提として売買契約を締結するわけではありませんが、万が一のことがありますので、事前にしっかりと確認しましょう。

 

(11) ローン特約

 

買主に責任がないにもかかわらず住宅ローンの借り入れができなかった場合、買主は売買代金を支払うことができず、最終的には契約違反となってしまいます。このような状況は買主には酷ですので、買主が、住宅ローンを利用して住宅を購入する場合、売買契約にローン特約を付すことが一般的です。買主は、住宅ローンの審査が不調に終わった場合に、売買契約を無条件で解除することができます。ただし、買主がローン審査に必要な手続きを怠った場合など、買主の落ち度でローンを借りることができなかった場合には、この特約は適用されません。ローン特約がある場合でも、契約前に資金計画を十分に検討して、借り入れの目処をもって契約することが大切です。
なお、新築マンションで、オプションによる追加工事や仕様変更を行った場合は、ローン特約の対象にならないケースもありますので注意が必要です。

 

(12) 瑕疵担保(かしたんぽ)責任

 

売買物件に、隠れた瑕疵(欠陥など)が発覚した場合、売主へ物件の修補や損害の賠償を求めることが可能です。
また、瑕疵が重大で、住むこともままならない場合などは契約の解除を求めることもできます。
売買契約では、売主が瑕疵担保責任を負うか否か、負う場合は物件の引き渡しからどのくらいの期間で責任を負うのかなどが取り決められます。
瑕疵担保責任の期間が短いほど買主に不利となり、逆に長いほど売主に不利となります。
隠れた瑕疵をめぐるトラブルは非常に多いことから、しっかりと契約内容を確認しましょう。

 

     2013.2.12 不動産ジャパンHPより転載