投稿

賃借した建物が飲食店として使用できなかったことによる賃借人の損害につき賃貸人の損害賠償責任が認められた事例 2022年4月号

2022.09.30

【ケース】
Yは、東京都某区内に所有する建物の1階及び地下1階部分(本物件)を
賃貸することとし、Yから賃借人探索の依頼を受けた宅建業者B社(本物件
の管理も受託していた模様。代表者はYの配偶者)は、これをウェブサイト
上で広告しました。平成28年2月、この広告を見たXは、宅建事業者A社に
内見の手配を依頼。A社及びB社立会いの下、Xは本物件の内見を行い、
その際Xは、本物件全体を飲食店として利用予定である旨述べたところ、
B社は利用可能である旨を説明しました。
その後、A社とB社の媒介により、YとXは本物件の賃貸借契約書(本契約)
を締結。

 

本契約では、
①契約面積:1階40.47㎡、地下1階50.46㎡、
②目的物の種類:店舗・地下倉庫、
③使用目的:店舗・飲食店、等とされました。

 

その後Xは、内装設計依頼先の業者から、地階に飲食店としての使用に必要
な避難経路等がないこと、地階は建築確認申請上の床面積に含まれていない
こと、建物の検査済証が未取得であることを聴取したため、B社に説明を求
めました。同年4月、B社は区役所や所轄消防署に確認したところ、地階を
店舗として使用することは法定容積率を超過し、建物の使用差止めや罰金等
の処分をする可能性がある旨示唆されたため、Xに地階を飲食店とするため
の工事の中止とこれに伴う損失補償を協議したい旨を通知。これに対してX
はA社を通じてB社に1階部分のみでは採算が取れず、実質的に営業不能な
ため本契約を解除するとともに、発注済内装工事費用等を請求する考えであ
ることを連絡し、同年6月にXは、Yに対して契約解除を通知し、本物件を明
渡した後、債務不履行に基づき支払済賃料・保証金、媒介報酬等の支払いを
求めて本訴を提起しました。



【解説】
裁判所は、次の通り判示し、Xの請求をすべて認容しました。
(1)Yは、本契約には「地下倉庫」との記載があること、地下部分を倉庫と
することを前提にした賃料としていた等と主張するが、

 

①Xは本契約締結にあたり、本物件全体を飲食店として利用予定である旨申
入れ、B社もこれが可能と説明していたこと、
②本契約では使用目的が「店舗・飲食店」とされてたこと、
③本契約には地階の用途を制限する定めがないこと等からすれば、本物件全
体を飲食店として利用する目的であったと認められ、地階部分が飲食店とし
て利用不能であったことからすれば、本契約全部が履行不能に至ったと認め
られる。

 

(2)従ってXの請求は、全てYの債務不履行と相当因果関
係のある損害となる(東京地裁 平成30年7月11日判決)。



【総評】
建物の用途変更にあたっては、建築基準法や各自治体の条例等の規制を受け
ることがあります。
オーナー様も一度謄本で建物の種類と用途地域を確認し対象物件がどのよう
な規制を受けるのか知っておく事をおすすめします。
また、契約締結前に対象物件が申込時の使用用途で問題ないか媒介業者及び
申込人に関係各所に問い合わせ・確認させてから契約するようにするとこの
ようなトラブルを回避することができます。