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改正民法と緊急事態宣言に伴う行政措置の関係  2020年1月号

2021.04.17

昨年民法改正がなされオーナー様の負担割合や修繕義務が大きく変わり、
また敷金等曖昧だった部分も明文化されました。
そんな中、新型コロナウイルスの感染が拡大し続け、今月ついに二度目 
の緊急事態宣言が1都3県に出されました。
改正民法611条「本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくな
った場合」に新型コロナウイルスにより使用出来なくなった場合は含ま
れるのかが問題となりえます。
                                                       
令和2年4月1日に施行された改正民法611条1項「賃借物の一部が滅失

その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった部分の割

合に応じて、減額される」とあります。改正民法611条は令和2年4月1

日以降に締結された賃貸借契約、あるいは更新(法定更新を除く)され

た賃貸借契約に適用されます(契約締結については附則34条1項で明らか

ですが、更新については法務省の見解です)。
旧民法611条では、「滅失」という要件しかなかったため、大地震により

建物が物理的に損壊したようなケースを前提とするとされていましたが、

改正民法では「滅失」だけではなく、「その他の事由により使用及び収

益することが できなくなった場合」が加味され、物理的な場合に限られ

ないと解釈し得る余地ができました。
そこで、今回の行政による施設閉鎖要請が、この「使用及び収益をする

ことができなくなった」という要件に該当するのかがまず問題となります。

今後、議論は分かれるところだと思いますが、一つの論点になることは間

違いないと思います。新型インフルエンザ特別措置法に基づく緊急事態宣

言による閉鎖要請は、従わない場合は指示に変わり得ます。

指示に反する場合にも罰則はないとはいえ、法律上、テナントには拒否す

るという選択肢は事実上与えられないと思われ、社会通念上は建物を使用

・収益できるとはいえないとの見解も強く主張されています。

したがって、実務的にはテナントからの申し出があれば、少なくともオー

ナーは賃料減額の話し合いに応ずるのが妥当と思われます。

なお、減額されるのは緊急事態宣言に基づく行政措置により閉鎖している

間の賃料に限るとい見解が有力ですが、特措法に基づかない都道府県独自

の要請(例:19時以降の酒類提供禁止要請により営業休止した居酒屋)の

場合、減額の問題が発生するかです。この点については、今回問題とされ

たいわゆる自粛警察 孤立無援とされるとの社会的風潮を考えると、やはり

解釈としては、それぞれの個別事情にはよるものの、減額の問題が発生す

るとの見解もあるかと思います。この場合も同様にテナントからの申し出

があれば、少なくともオーナーは賃料減額の話し合いに応ずるのが妥当と

思われます。ただし、この場合の減額の具体的な額ですが、最近の行政か

らのテナントへの支援制度も充実してきていることを踏まえると、テナン

トが取得し得る支援額も視野に入れてオーナーとテナントが話し合いする

ことになるでしょう。                                                       
                                                       
特措法改正に関して緊急事態宣言に伴う自粛要請に従わない場合の罰則規

定も改正案に盛り込む事も聞きます。罰則規定が盛り込まれれば救済支援

策の一つとしてオーナーへ賃料減額の申し出ようと考えるテナントは多く

なると思います。
                                                       
賃料減額の合意をされる場合には、下記3点を盛り込んだ合意書等書面で

の行う事をおすすめ致します。

 

①従前の賃料(約定賃料、減額前の賃料)をお互いに確認 
②いくら減額するのか、また減額期間はいつまでなのか  
③いつ従前の賃料にもどすのか  
                                                       
①がなく単純に合意してしまうと③で賃料を戻す際に法的には増額と解釈

できてしまいますので、借地借家法に基づく手続きを踏まえなければなら

ない可能性があります。

②につきましても〇万円減額の◎万円、令和3年△月分賃料(△月末日支

払分)~令和3年□月分賃料(□月末日支払分)と明確に記載しましょう。

③も同様に令和3年〇月分賃料(〇月末日支払分)以降の賃料については

契約 書所定による賃料を支払うのように明記しましょう。

また書面に「新型コロナウイルス感染症の流行に伴う賃借人の収入減少と

それを賃貸人が支援する目的で減額 する」旨を記載しておくとより良いか

もしれません。